「韓流ラブストリー 恋の糸」第15話

「韓流ラブストリー 恋の糸」第15話
著者:青柳金次郎


仁川空港に着いた二人は荷物を受け取りロビーへと向かう。
「居ないなぁ……」
「誰が?」
「うん……、怜音に紹介したい人がいるって言っただろう。おかしいなぁ……」
「アッ、アミ! こっちこっち!」
 怜音は小走りで近寄って来るアミに手を振った。
「エッ……、アミ?」
「あ、ジャンヨル、紹介するわぁ、K―アカデミーのアミさん。私の韓国語の先生なの……」
 ジャンヨルは首を傾げ乍ら表情が固まっている。
「あれぇ……、おっ、お兄ちゃん!」
「やっぱり! アミ、何で?」
「エッ、二人ともどうしてぇ……」
 三人は三人ともが疑問符がいっぱいの表情で顔を見合わせた。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第15


「怜音、まさかぁ、怜音の彼氏って……、この人?」
「そうだけど……、アミは何で……」
「アミ、お前が怜音のせっ、せっ、先生なのかぁ……」
 三人はもう一度顔を見合わせてあまりの偶然に絶句する。
「アミ、さっきジャンヨルの事、お兄ちゃんって言わなかった?」
「そう……、言った。だってお兄ちゃんだもん。ねぇ、お兄ちゃん、じゃぁ今日、どうしても会わせたい人がいるっていうのは怜音の事なの?」
「あぁ、そうだよ。でも驚いたなぁ、こんなことがあるとは……」
 三人はもう一度顔を見合わせると、今度は大声で笑い出した。全く人目を気にすることなく大声で、そして何故か三人で肩を組み合って円陣を作るとお互いにそれぞれ誰に言うと言う訳でもなくよろしく! と何度も言い続けた。
 その後三人は一先ず空港近くのレストランへ入り食事をした。
「ねぇ、怜音、本当にお兄ちゃんでいいの? 兄貴は相当女性に対して鈍いわよ」
「余計な事を言うなよ。アミ、特に子供の頃のこととか……」
「それって言ってくれってこと?」
「違うよ。マジで言うなってことだよ!」
「ねぇねぇ、何よ? アミ私にも教えて!」
「駄目! アミ、絶対に言っちゃ駄目だぞ! 余計なこと言ったらアミの事も怜音に話すからな」
「ずるいわよぉ、お兄ちゃん」
「ねぇ、二人とも教えてよぉ、私にも……」
 二人の言い合いはだんだん激しさを増していき、今にも兄弟喧嘩が始まりそうな雰囲気になり、怜音は少し引き気味で仲裁に入る。
「二人とも喧嘩しないでよ。ジャンヨルぅ、皆が見てるから……」
「エッ……」
「アハァ、どうもお騒がせしました。お兄ちゃん頭下げてよぉ」
「お、おぉ……」
 ジャンヨルも我に帰りペコリと頭を下げた。怜音も顔を赤らめ乍ら二人と一緒に周りの人達に頭を下げる。その後三人は落ち着きを取り戻しゆっくりと食事を始めた。
「でもビックリしたなぁ、アミとジャンヨルが兄弟だったなんて、こんな偶然ってあるんだねぇ」
「俺だって一緒だよ。怜音とアミが知り合いだったなんてさぁ」
「私も驚いたなぁ、お兄ちゃんの彼女が怜音だなんて、ビックリしたなぁ」

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第15


 そうこうしているとジャンヨルの帰りの飛行機の時間が来た。
「ジャンヨル、今日はありがとう。それにアミがジャンヨルの妹って聞いて、心強い仲間が出きったって感じがする。もう大丈夫だよ」
「まぁ、お兄ちゃんも怜音の事は心配ないから、私達女は女どうしでよろしくやるからさぁ、そっちは一人で適当にやってね」
「なんだよぉ、その言い方はないだろう……、怜音、取り敢えず電話は何時でも出来るからさぁ、毎日するから!」
「待ってるね! ジャンヨル、愛してるわぁ」
「俺もだよ、怜音!」
「ハイハイ、ごちそうさまでした。お兄ちゃん飛行機が飛び立ちますよ!」
「あっ、ヤバイ。じゃぁ、怜音をよろしく頼むぞアミ!」
「分かってるわよぉ。気を付けて帰ってね」
「ジャンヨル、電話してね」
「OK,必ず電話するから」
 ジャンヨルは手を振りながら日本へと帰って行った。
「さぁ、行こうかぁ、怜音!」
「うん、行こう」
 怜音は何もない素振りをしてみたものの、いざジャンヨルが日本へと帰って行く後ろ姿を目にすると、心の中がキューンと締め付けられる感覚に陥った。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第15


「怜音、取り敢えず今日は家に泊ったら? 私も一人だから誰かいると心強いしね」
「そうさしてもらおうかなぁ、一応今日からこっちで借りた部屋には入れるんだけど、なんだかちょっと気が乗らないというかさぁ……」
「それじゃ決まりね。今夜は話し明かそうよ」
「そうね、さっきの二人の話の続きには興味もあるしねぇ」
 その夜二人の話は夜空に煌めく星に届くくらい、楽しくて長い話になった。Kーアカデミーでは一応は先生と生徒と言う間柄だった二人だが、この日を境に仲のいい姉妹といった感じになっていく。
(ジャンヨル、私頑張るからね……)


前話を見る

この記事を書いたのは……

support事務局先生

>> support事務局先生の紹介ページへ
▼ この記事を読んだ人は