「韓流ラブストリー 恋の糸」第16話

「韓流ラブストリー 恋の糸」第16話
著者:青柳金次郎


「怜音、朝ご飯食べに行こうかぁ」
「あぁ、眠たい。今何時?」
「朝七時よ。ソウルの朝は早いのよ」
「ふぁ~、早すぎるよ。仕事は明日からなのよ」
「何言ってるの、怜音はソウルへ遊びにきたの? ソウルはビジネスの街よ。だから朝は早いのよ。一日でも早くなれないと……」

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第16


 アミは怜音を朝早くおこしソウルの朝の街へとつれだした。怜音は眠い目をこすりながらアミの後をトボトボとついて行く。
 ソウルの朝の街は多くのビジネスマンが行き来している。そんな街路脇に出ているソウル名物朝屋台が並ぶ街路をアミは怜音を連れて歩く。
「怜音、まずはジュースで目を覚まそうか。ここのタルギバナナジュース最高だから」

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第16


「…………」
「どう? 美味しいでしょう」
「エッ! なにこれ、最高! 美味しい!」
「どう? 早起きしたかいがあったでしょう」
「うん、美味しい。こんなの初めてだよぉアミ」
「ソウルの朝屋台は最高よ! まだ他にもあるから行ってみよう」
 アミはどんどん先へと進んでゆく。そして全面ガラス張りで朝の光が差し込みおしゃれなカフェへと入って行った。
「怜音、取り敢えずソウルの朝カフェといえば、ここカフェベネよ」
「わぁ~、いいなぁ、それに美味しそう。あれ! あの人が食べてるナニ? アミ!」
「あぁ、流石は怜音お目が高いわねぇ。チーズボルケーノよ」
「なに? そのボルケ……って?」
「じゃボルケーノにしようか。飲み物はコーヒーでいい?」
「ウン、お任せします」
 二人が座るテーブルに運ばれてきたのはチーズボルケーノというパンだった。パンを二つに割ってみると中にはとろけだすチーズにベーコンが入っていて朝から食欲を誘う香りが漂った。
「う~ん、これも最高! アミ私ソウルに来て良かった。毎朝こんな美味しいものに囲まれて暮らすなんて最高だわ!」

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第16


「怜音食べ過ぎると太るわよ。それに今日だけよ、明日からは仕事始まるんでしょう。それにこの後はあなたの住む部屋へ行って片付けしなきゃ……」
「あっ、そうか……、私ずっとこれから先もアミと一緒に暮らすものとばかり思ってた。そうか……」
「食べ終わったらいくよ」
 怜音はアミの言葉で一気に現実へと引き戻される。
「そうだよね。私ソウルに遊びに来たんじゃなかったもんね……」
「そうそう、早く食べて片付けに行こう。私今日夕方まで空いてるから、昼間の授業は取ってないからさぁ」
「ごめんね。アミ……」
「気にしなくていいよ!」
 この時怜音は浮かれた気持ちだった自分を恥じた。そして複雑に色々な思いが綯い交ぜになった気持ちを引き締めた。
「へぇ~、綺麗じゃない怜音、私もこんな部屋で暮らせたら
いいなぁ」
「本当にきれいな部屋ね。でも一人で済むには広すぎるわよぉ……」
「いいじゃん、会社が借りてくれてるんでしょう。甘えちゃいなよ、ここなら事務所まで目と鼻の先だしね!」
「エッ、アミ何で私の会社の事務所の場所まで知ってんの?」
「怜音を愛するおせっかいな彼氏が教えてくれたの、怜音はソウル初めてだから何もわからないだろうから力になってやってくれ、ってね」
「ジャンヨルが……、ありがとうアミ。良かったアミが傍にいてくれて、私一人だったら何もできなかったよ」
「どういたしまして!」
その後二人は日本から届いた段ボール箱を開けて取り敢えずかたずけを済ました。人とおり片付いた部屋はビジネス街に面した高層マンションで日本で借りればゆうに三桁はするような部屋だった。
「怜音、じゃそろそろ私帰るわね。夜の授業があるから……」
「あぁ、そうかぁ、そうだよね。忙しいもんね……」
 この時アミは怜音の心ぼそい気持ちは十分わかってはいたがあえて突き放した。そうすることが一日でも早くソウルでの生活に慣れる近道だと思ったからだった。
「じゃ行くね。ここに事務所の場所書いといたから、もし分からなかったら電話番号も書いてあるから電話しなさい。あなたの部下達が迎えに来てくれることになってるから、明日は寝坊しないようにね……」
なにからなにまで準備万端に整えてアミは部屋を出ていった。怜音はあえてそうしたアミの気持ちは十分理解していた。そしてソウルでやるべきことを再確認し、明日に向けての準備をした。
窓から見えるソウルの夜景は日本とはまた違った雰囲気で最高に綺麗だった。

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