「韓流ラブストリー 恋の糸」第10話
「韓流ラブストリー 恋の糸」第10話
著者:青柳金次郎
「ミッコ、あの二人なかなかイイ感じじゃないか……」
「武人もそう思う、なんだか若いころの私達みたいじゃない」
「ああ、俺もそう思っていたんだ。若いっていいよな……」
「本当ね! 私達みたいにならない様に、ちゃんと二人を見守ってやろうよ、武人……」
「ああ……」
ミッコと武人は学生時代付き合っていて卒業した後もしばらくの間は付き合っていた。
だが次第にお互いの仕事の都合で少しずつ二人で過ごす時間は少なくなっていった。
そしてある時、武人に上司の娘とのお見合いの話が持ち上がった。
その時のミッコと武人は決して付き合っているといえるような状態ではなく、会う事はおろか仕事を終えた後、電話一本する事もない状態だった。
武人は迷いに迷ったが、結局は上司の強い押しに根負けし、そのまま流れに任せるようにして結婚した。
勿論ミッコにも武人の結婚式の招待状は届いた。ミッコはどうにか都合を付けて武人の結婚式に出席した。そこには自分ではない別の誰かと幸せそうに微笑む武人の姿があった。
![青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第10 青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第10](https://auth.k-kaiwa.com/images_sys/blog/k-kaiwa/hanryu10/20150810180549014922.jpg)
そしてミッコは、乗り遅れてしまった電車の後姿を見送るようにして、武人のタキシード姿を見送った。
そして後を追うようにしてミッコの母親が持ってきたお見合い話を受け入れて今に至っている。お互いが仕事にのめり込んだ末の結末だった。
勿論、今は二人の間に男と女と言う感情は微塵もなく、若かりし頃の苦い思い出でしかない。
「まぁ、仕事は仕事だから公私混同させないようにはするから、そっちもそうしてくれる?」
「ああ、分かってる! しかし妬けるぜ、あの二人……」
「フッ、武人、羨ましいんでしょう……」
「ああ、憎たらしいくらいになっ!」
「私も……」
打ち合わせを終えて怜音とジャンヨル二人は、道路脇に立って仲良く帰りのタクシーを拾っている。ミッコと武人は横並びでそんな二人を見詰めている。
ミッコと武人の目の前にいる二人は、まるで昔の自分達二人がそこにいるような錯覚に陥っていた。
「ミッコ先輩とりあえずタクシー一台ひろえました」
「武人、先に乗って帰って、私達は適当に帰るから……」
「ああ、じゃお言葉に甘えさせてもらうよ。なんせ今じゃこの俺も二児のパパだしね。しかも週末は何時も俺の帰りを寝ずに待っていてくれるしな……」
武人はミッコに優しく微笑みを向けるとジャンヨルが待つタクシーの方へと歩きだした。その背中をミッコは何か懐かしいものを見るかのように見詰めている。
(ミッコすまない。俺がもっとしっかりしていれば俺達は……)
(武人お互い幸せになろうね。私、武人のこと……)
武人とジャンヨルを載せたタクシーはネオンの向こうへと走り去って行った。ミッコと武人が乗り過ごしてできた時間の空白はいくら埋めようとしても埋めることが出来ない事を二人ともちゃんと理解していた。
二人の心の中にはセピア色に色褪せた時間だけが転がっていた。
![青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第10 青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第10](https://auth.k-kaiwa.com/images_sys/blog/k-kaiwa/hanryu10/20150810180554547804.jpg)
「ミッコ先輩、どうかしました?」
「エッ、いいえ、何でもない。怜音、もう一軒行ってから帰ろうか?」
「いいですねぇ、少し飲み足らないしね」
「やっぱりかぁ、だと思ったんだぁ、怜音の事だからさぁ、ジャンヨルの前でいい子を演じていたんでしょう。このぶりっ子!」
「本当に先輩は何でも私の事御見通しなんですね。大好きです! 何処までも付いて行きま~す」
「ヨシ! じゃ行こう!」
ミッコは怜音の肩を抱くと歩きだす。そして二人は街のネオンの輝く中へと消えていく、しかし二人の心に中に漂う想いは真逆のモノだった。ミッコは嬉しそうにグラスを傾ける怜音の横顔を見詰め乍ら若かりし頃の自分を思い浮かべていた。
(怜音、ジャンヨルに大切にしてもらいなよ、絶対に放しちゃ駄目だよ……)
ミッコの視線は怜音から窓の外へ、そこにはミッコに微笑むように夜空の星達がキラキラと煌めいていた。
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著者:青柳金次郎
「ミッコ、あの二人なかなかイイ感じじゃないか……」
「武人もそう思う、なんだか若いころの私達みたいじゃない」
「ああ、俺もそう思っていたんだ。若いっていいよな……」
「本当ね! 私達みたいにならない様に、ちゃんと二人を見守ってやろうよ、武人……」
「ああ……」
ミッコと武人は学生時代付き合っていて卒業した後もしばらくの間は付き合っていた。
だが次第にお互いの仕事の都合で少しずつ二人で過ごす時間は少なくなっていった。
そしてある時、武人に上司の娘とのお見合いの話が持ち上がった。
その時のミッコと武人は決して付き合っているといえるような状態ではなく、会う事はおろか仕事を終えた後、電話一本する事もない状態だった。
武人は迷いに迷ったが、結局は上司の強い押しに根負けし、そのまま流れに任せるようにして結婚した。
勿論ミッコにも武人の結婚式の招待状は届いた。ミッコはどうにか都合を付けて武人の結婚式に出席した。そこには自分ではない別の誰かと幸せそうに微笑む武人の姿があった。
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そしてミッコは、乗り遅れてしまった電車の後姿を見送るようにして、武人のタキシード姿を見送った。
そして後を追うようにしてミッコの母親が持ってきたお見合い話を受け入れて今に至っている。お互いが仕事にのめり込んだ末の結末だった。
勿論、今は二人の間に男と女と言う感情は微塵もなく、若かりし頃の苦い思い出でしかない。
「まぁ、仕事は仕事だから公私混同させないようにはするから、そっちもそうしてくれる?」
「ああ、分かってる! しかし妬けるぜ、あの二人……」
「フッ、武人、羨ましいんでしょう……」
「ああ、憎たらしいくらいになっ!」
「私も……」
打ち合わせを終えて怜音とジャンヨル二人は、道路脇に立って仲良く帰りのタクシーを拾っている。ミッコと武人は横並びでそんな二人を見詰めている。
ミッコと武人の目の前にいる二人は、まるで昔の自分達二人がそこにいるような錯覚に陥っていた。
「ミッコ先輩とりあえずタクシー一台ひろえました」
「武人、先に乗って帰って、私達は適当に帰るから……」
「ああ、じゃお言葉に甘えさせてもらうよ。なんせ今じゃこの俺も二児のパパだしね。しかも週末は何時も俺の帰りを寝ずに待っていてくれるしな……」
武人はミッコに優しく微笑みを向けるとジャンヨルが待つタクシーの方へと歩きだした。その背中をミッコは何か懐かしいものを見るかのように見詰めている。
(ミッコすまない。俺がもっとしっかりしていれば俺達は……)
(武人お互い幸せになろうね。私、武人のこと……)
武人とジャンヨルを載せたタクシーはネオンの向こうへと走り去って行った。ミッコと武人が乗り過ごしてできた時間の空白はいくら埋めようとしても埋めることが出来ない事を二人ともちゃんと理解していた。
二人の心の中にはセピア色に色褪せた時間だけが転がっていた。
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「ミッコ先輩、どうかしました?」
「エッ、いいえ、何でもない。怜音、もう一軒行ってから帰ろうか?」
「いいですねぇ、少し飲み足らないしね」
「やっぱりかぁ、だと思ったんだぁ、怜音の事だからさぁ、ジャンヨルの前でいい子を演じていたんでしょう。このぶりっ子!」
「本当に先輩は何でも私の事御見通しなんですね。大好きです! 何処までも付いて行きま~す」
「ヨシ! じゃ行こう!」
ミッコは怜音の肩を抱くと歩きだす。そして二人は街のネオンの輝く中へと消えていく、しかし二人の心に中に漂う想いは真逆のモノだった。ミッコは嬉しそうにグラスを傾ける怜音の横顔を見詰め乍ら若かりし頃の自分を思い浮かべていた。
(怜音、ジャンヨルに大切にしてもらいなよ、絶対に放しちゃ駄目だよ……)
ミッコの視線は怜音から窓の外へ、そこにはミッコに微笑むように夜空の星達がキラキラと煌めいていた。
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