「韓流ラブストリー 恋の糸」第8話

「韓流ラブストリー 恋の糸」第8話
著者:青柳金次郎


叔母さんの作った手料理でお腹一杯になった二人はしばらくの間、叔母さんを交えて子供の頃の昔話をしていた。和気あいあいとした雰囲気で三人の顔には笑顔が絶えることなく時間が過ぎていった。
そして二人は叔母さんの店を出た。
「叔母さん、今日はありがとう。また来るね!」
「何時でも来なさい。怜音さんもまた来てね。待ってるからね」
「ありがとうございます。お料理とてもおいしかったです」
「じゃ、また来るね! 叔母さん」
「うん、二人とも仲良くね」
 叔母さんはジャンヨルと怜音の二人を優しいまなざしで見送った。その後二人はカフェで休日の昼下がりまったりとした時間を過ごした。
(こうしているとなんだか恋人同士みたいだなぁ、周りの人達はきっとそう思うだろうなぁ、それも悪くないかもね、ジャンヨルなら……)
(怜音さん迷惑じゃなかったかなぁ、喜んでくれてるかなぁ……、でもいきなりすぎたかなぁ、叔母さんの処へ連れてくのは……)

二人の距離は間違いなく近づいていた。カフェでも二人は色々な話をした。まるで離れ離れだった恋人が、何十年ぶりかに会ったかのように幾ら話しても話したりない、という感じだった。

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第8話


やがて街中がオレンジ色に染まりだした頃、怜音ははっとなって夜の予定を思い出した。その日怜音は、夜八時からKーアカデミーの韓国語のレッスンを予約していたのだった。
怜音はジャンヨルにそのことをはなした。するとジャンヨルはニンマリしながら頷いて言った。
「それは大変だ。早く帰らないとね、韓国でのビジネスに支障をきたすといけないからね。今日はこの辺でおひらきにしましょう」
「すみません。せっかく話も盛り上がってきたのに……」
「じゃ、送ります。いきましょう!」
「はい」
 ジャンヨルは駅の改札口で怜音を見送った。
「それじゃまた……、あ、また誘ってもいいですか?」
「勿論! とても楽しかったです。また今度誘ってくださいね」

青柳金次郎「韓流ラブストリー 恋の糸」第8話


お互いに別れを惜しむように手を振った。その後怜音は少し焦りながら家路を急いだ。家につくと夜七時を少し回ったところだった。怜音は何時ものようにお風呂場へと向かいシャワーを浴び、念入に化粧を落とした。
 
そしてパソコンのスイッチを入れるとメールをチェックする。ショッピングサイトからのダイレクトメールに混ざってミッコからのメールが入っていた。
『今日のデートはどうでした? 明日結果報告してネ、私の大切な妹、怜音へ。お疲れ様でした。』
「そうかぁ、私の事ミッコ先輩は妹だと思ってくれてるんだ。なんだか今日はいっぺんに家族と兄弟が増えたような気がするなぁ……、イイ感じだな……」
 そして八時が来てアミからのコールがなった。
「は~い、怜音元気だったぁ?」
「元気だったよ。アミも元気だったぁ?」
「元気だよ、私も! でも怜音は何かイイことあったでしょう?」
「フフフゥ、わかる?」
「ええ、だって怜音って分かりやすいもん」
「そう? なんだか今日は同じことを言われる日だなぁ……」
「話は後で聞くから、取り敢えず授業の方を済ましちゃおうか!」
 そして授業が終わって何時もの世間話になった。
「どんな人なの怜音? その人は……」
「う~ん、一言で言うと誠実な人、それでいて優しくて、時々見せる子供のような仕草が堪らない……、ていうか私何話してんだろう。もう恥ずかし~い」
「完全に怜音はその人の事好きになっちゃたね!」
「そうかなぁ……」
「そうよ! イイじゃない、彼氏にしちゃえば?」
「やだぁアミったら大胆なんだから……」
 怜音は完全に舞い上がってしまっている。アミはその様子を見て微笑みながら彼の名前を聞いた。
「それで怜音、その人なんて言う名前なの?」
「あっ、まだ話してなかったっけ?」
「聞いてないわよ!」
怜音は勿体ぶりながら「ナ・イ・ショ!」と言うとアミは溜息を吐きながら返す。
「なによそれ、もったいぶらないでよ。そこまで話しといて気になるじゃない。何処の会社に勤めてるんだったっけ? 兄弟何人いるのよ?」
「池袋に韓国料理屋さんがあって、そこにその人の叔母さんがいて、子供の頃お母さんを無くした後は、その叔母さんに妹と二人、我が子の様に可愛がってもらったって言ってたなぁ」
「池袋? 韓国料理屋? へぇ~……」
「どうかした?」
「いやぁ、何でもない!」
「知ってるの? アミ……」
「……知るわけないじゃない。ただ、私の知り合いにも似たような人がいたからちょっと思い出しただけ……」
「ふ~ん、世の中には似たような人がいるんだね」
そしてその日の授業は終わり、アミとのスカイプでの交信を終えた。怜音はやっと今日一日の予定を終えて一安心という感じで窓の外を見る。夜空にキラキラと星たちが輝いている。その頃、授業を終えたアミは、韓国ソウルの自宅の窓から見える夜空の星を眺めながら、誰かを思い出しているようだった。

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